東京の地価はコロナ禍で本当に暴落したのか?路線価分析で見えた「V字回復の裏で取り残された銀座」

更新日:2026/8/14




相続税路線価とは?


相続税や贈与税において土地等の価格は、時価により評価することとされています。しかし、納税者が土地の時価を知ることは容易ではありません。
そこで、国税庁は毎年1月1日時点における道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価格を7月初旬に公表しています。

路線価の詳細については、こちらの記事でもご紹介しています。

01コロナ禍で地価は下がった?

コロナ禍では「都心の地価が暴落した」というニュースが大きく報じられましたが、全国的に見るとその影響は限定的で、下落は一部のエリアにとどまっていました。
では、実際にどのような推移をたどっていたのでしょうか。
まずは東京都全体の商業地・繁華街の路線価データから、平均値の推移を見ていきます。
東京都商業地路線価平均値推移

図1:<東京都>商業地・繁華街の路線価平均値推移

集計結果を見ると、コロナ禍真っただ中であった2021年においても東京都全体の平均路線価は下落しておらず、
むしろ微増傾向を維持していたことが分かります。さらに2024年にかけては、コロナ前を大きく上回る水準まで伸びていました。
一見すると「東京の地価はコロナ禍の影響をほぼ受けなかった」ようにも見えます。


02コロナ禍で地価の下落が顕著だったエリア

では、もう少しエリアを絞ってミクロな視点で分析してみましょう。
日本一の路線価(鳩居堂前)を誇る「銀座」を擁する、 東京都中央区の商業地・繁華街に限定して平均値の推移を集計しました。
中央区商業地路線価平均値推移

図2:<東京都中央区>商業地・繁華街の路線価平均値推移

東京都全体とは対照的に、コロナ禍真っただ中であった2021年の中央区では、路線価が大きく落ち込んでいることが分かります。
「コロナで地価が下がった」という現象は都内全域ではなく、人流抑制や店舗の休業要請、 インバウンドの途絶といった直接的な打撃を受けた、商業・経済の中心地に強く表れていたことがうかがえます。
なお、この下落も2024年にかけてはV字回復を果たし、コロナ前の水準を大きく上回るまで復調しています。


03コロナ禍を経て回復できていない意外なエリア

では、中央区のすべてのエリアがコロナ前の水準まで地価を戻したのでしょうか。
SQLを用いて「コロナ禍で下落し、2024年時点でもコロナ前の水準まで回復できていない路線価」を抽出したところ、意外なエリアが浮かび上がってきました。
コロナ前水準に地価が戻っていないエリア

図3:コロナ前水準まで地価が戻っていないエリア(下図に地理院地図を使用)

抽出されたのは、日本を代表する高級繁華街である「銀座の一部エリア(主に裏通り)」でした。
コロナ前の地価水準が非常に高かったことも影響していますが、表通りの賑わいとは対照的に、 特定の路地や中通りでは2024年時点でもコロナ前の水準に届いていないことが分かります。
コロナ前水準に地価が戻っていないエリア路線価平均値推移

図4:該当エリアの路線価平均値推移

推移グラフを見ると、回復傾向にはあるものの、中央区全体の平均的な勢いと比べると上昇が鈍いことが分かります。
インバウンド消費の恩恵を直接受ける中央通り沿いなどとは異なり、法人接待や夜間需要の影響を強く受けるエリア特性が、復調のスピードに差を生んでいると考えられます。

なお、最新の2025年データも追跡分析したところ、未回復エリアは徐々に縮小しており、銀座駅周辺などの一等地から順次コロナ前の水準を取り戻しつつあることも確認できました。


まとめ路線価の過去データの推移から見えてきたリアル

「コロナ禍を経て地価はどうなったのか?」という疑問からスタートした今回の分析ですが、 東京都全体で見ると世間のイメージほど下がっていなかったこと、そして回復の遅れているエリアが「銀座の一部」という 意外な場所であったことが見えてきました。

このように、路線価の過去データをSQLやGISを用いて分析することで、 ニュースや大まかな平均値だけでは見えてこない「街のミクロな変化や構造問題」を鮮明にあぶり出すことができます。
路線価データは、単なる評価額の集計だけでなく、こうした市場分析やエリアマーケティングにも幅広く活用可能です。
今後もデータから見えてくる興味深いテーマをご紹介していきます。


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